| 立松 和平 (作家) |
禅の世界では、「渓声山色」(けいせいさんしょく)という。 渓(たにがわ)のせせらぎは絶えず真理を語りつづけてやまない釈迦の説法があり、山の形は真理を説く釈迦の姿であるということだ。つまり、我々を取り巻くすべての自然現象は真理ということであり、真理はいたるところに満ちているということだ。その真理を目の前にしながら、それを見ることができず、聞くことができないのは、哀れなことではないか。HASHIの写真は、我々の身辺にある現象を瞬間で切り取り、モノの持つ実相を開示して見せてくれる。
微分された一瞬の姿を見せられることで、我々はなんとも濃い時間を生きていることを実感させてくれる。一瞬に見やるモノたちの表情は、なんと生き生きしていることだろう。この一瞬が、永劫の未来へとつづいていく時間の無限の築積をつくっている。
我々はこのような時間の中で、このようなモノに囲まれて暮らしているのだ。
「色即是空」とは、現象(モノ)を虚空の中にはなつことであり、モノの一瞬の相を真理ととらえることである。それを写真に写しだし、真理を我々の前に開示してくれるHASHIの仕事こそ、「空即是色」といえる。
「色即是空」ときて、「空即是色」と返してやる。HASHIの仕事は現象と真理をめぐるエキサイティングな往還なのである。
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